2600年前のインド。とある小国の王子が、国教であるバラモン教の教えに飽き足らず、人生に悩んでいました。
母が自分を生むのと引き換えに亡くなっていて、幼いころから多感であったその王子は、ある時、東の城門を出た際に、老いさらばえた老人の姿を見ました。
人は必ず老い、儚い運命に抗うことはできないのだと彼は知ります。
また、ある時に南門を出た際、死にかけの病人を見ます。
その後、西門を出たときには、死者を弔う行列を見ました。
最後に北門を出たとき、出家した僧侶を見て、人間は限りある命を自分の欲を満たすために生きるのではなく、老いや病や死を超えた普遍的な真理を求めるために生きるべきなのではないだろうか?と思いました。
彼の父、シャッドーダナ王は、王子が物思いにふけりやすいという性格を心配し、城の中に老いや病や死といった不安材料をなるべく排除していたそうです。
しかし、その若き王子は、これが自分を待つ未来であることを深く悟ったのです。
ある夜、少ない侍従を連れて王子は城を脱出します。妻子もあり、将来は一国の主を約束されていたにも関わらず…。
彼は、その後、自らの疑問や悩みを追求し、大自然の中で修行を重ねます。
人だけではなく、動物や其処此処にある木々や石、川や山の姿にも学び、自分の心を磨き、精神を研ぎ澄ましていきました。
彼の名はゴータマ・シッダールダ。
後に釈迦と呼ばれる仏教の開祖です。