玉です。
祇園精舎の鐘の声
諸行無常の響きあり
沙羅双樹の花の色
盛者必衰の理をあらわす
おごれる人も久しからず
ただ春の世の夢のごとし
たけき者も遂には滅びぬ
ひとえに風の前の塵に同じ
(『平家物語』)
この世は「無常」です。
時間を止めて「今」を留めたいと思っても、変わりゆくものを止めることはできません。
変転することこそが真実であり、無常の世界を避け得る人間は誰一人いません。
では、それらの苦しみが一切無かったら幸せなのかというと、それはそれで地獄だと思います。
かつて、『ギルガメシュ叙事詩』の中で、ギルガメシュ王は不老不死を求めて旅をし、先に不老不死を得ていたウトナピシュティム(ノア)に出会います。
ウトナピィシュティムは言います。
「死ねないという苦しみほど、苦しいものはない」
無常の苦しみを避けて生き続けたところで、生ける屍が飯を食い、排泄をするだけの存在に成り果てるだけです。
無常。
つまり有限であることには価値があります。
何事も変わらず、苦しみの無い「無機質な」世界に、愛情など生まれる余地はありません。
誰も苦しんだり悲しんだりしないのなら、他人の気持ちなどを考える必要がなくなるからです。
かくして、世は無常なり。すべては変わりゆき、生まれた瞬間より滅びに向かって進んでいます。
おぉ、帝よ。浪(なみ)の下にも、都が候ぞ。